トレーニングベルトがアイソメトリックな挙上動作に与える影響

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る
isomeric

今回もベルトの効果についての話です。トレーニングベルトがアイソメトリックな挙上動作での筋力発揮や腹圧に与える影響について調べた研究を紹介します。

論文タイトル

Effects of abdominal belts on intra-abdominal pressure, intra-muscular pressure in the erector spinae muscles and myoelectrical activities of trunk muscles.

Clin Biomech (Bristol, Avon). 1999 Feb;14(2):79-87.

実験内容

7人のトレーニング経験のない健康な男性(24~36歳)に、3種類のアイソメトリックな挙上動作(背中の筋力中心の動作1種類と、脚の筋力中心の動作1種類、腕の筋肉中心の動作1 種類)を行わせ、トレーニングベルトが腹圧や筋肉の活動に与える影響を調べた。

結果

  • 3つの動作すべてでベルトの使用による腹圧の変化はなかった。しかし脊柱起立筋の内圧は有意に高まった。
%e8%84%8a%e6%9f%b1%e8%b5%b7%e7%ab%8b%e7%ad%8b%e3%81%ae%e5%86%85%e5%9c%a7

図1:脊柱起立筋の内圧の比較。左が腕中心の動作、中央が脚中心の動作、右が背中中心の動作。WOBはベルト無し群、WBはベルト有り群。

 

  • 3つの動作すべてで腹直筋と脊柱起立筋の活動が高まり、外腹斜筋の活動が低下した。腹直筋の活動は特に脚の筋力中心の動作において大きかった(54%増)。

まとめ

トレーニング経験のない人がベルトを使用しても、アイソメトリックな動作で発揮できる筋力や腹圧に変化はないが、脊柱起立筋と腹直筋の活動はやや高まる。

考察(管理人の私見)

一般的には「トレーニングベルトを巻くと腹圧が高まって体幹が安定する」と言われます。実際このことを裏付ける論文は複数あり[1,2,3]、そのうちの一つ[3]はこのサイトでも多レップのスクワットにおけるトレーニングベルトの効果という記事の中でも紹介しています。

では、なぜこの研究ではベルトを巻いても腹圧は上昇しなかったのでしょうか。その理由について筆者は2つの可能性を上げています。

1つ目の理由は、今回の研究がアイソメトリックな挙上動作であったことです。先行研究はどれも、スクワットやデッドリフトなどのアイソメトリックでない動作で測定が行われていました。ベルトの使用は、実際のトレーニングの動作では腹圧を高めるのに役立つ可能性が高いと考えられます。

2つ目の理由は、今回の被験者全員がトレーニング未経験者であったことです。先行研究はどれも、被験者にトレーニング経験者を含んでいました。また、この研究者らが日本人のウェイトリフターに対して調査した結果、多くのウェイトリフターが「ベルトを使用することでリフティングパフォーマンスに好影響があった」と答えたそうです。ベルトの使用により腹圧をうまく高めるためには訓練が必要なのかもしれません。

これらのことを考えると、今回の研究でベルトを使用しても腹圧が上昇しなかったことも頷けます。ベルトの使用に慣れている経験者がスクワットなどを行った場合、ベルトを使用することで腹圧を高められる可能性は非常に高いでしょう。

また、今回の研究では腹直筋と脊柱起立筋の活動が大きかったという結果が出ています。これは、ベルトの圧力で内側に引き伸ばされた腹直筋が収縮するとき、ベルトを前方に押す力が働くことが原因だと考えられます。

図1:ベルトを巻いた際に腹直筋と脊柱起立筋にかかる力の模式図。左が腹側、右が背中側。

図2:ベルトを巻いた際に腹直筋と脊柱起立筋にかかる力の模式図。左が腹側、右が背中側。

 

腹直筋がベルトを外側に押し出すと、背中側では脊柱起立筋を押す方向に力がかかることとなり、その結果脊柱起立筋の内圧が増したものと考えられます。

実際のところ、腹圧や脊柱起立筋の内圧が高まることで安全性が高まるのかどうかは分かりません。しかし、ベルトの使用により動作速度が向上した[3,4]という報告は複数あるので、パフォーマンス向上に好影響を与えている可能性はあります。

少し長くなりましたが、結論としては「ベルトは恐らく慣れればトレーニングのパフォーマンスを向上させるから、まだ使ってない人は早く慣れた方が良いだろう」ということです。科学的なエビデンスも重要ですが、なんでも科学的に証明されるまでには時間がかかります。取り入れて害がなさそうなことは積極的に取り入れていくのが良いと思います。ベルトの件で言えば、現実問題パワーリフターの多くがベルト使っているというは重視したいポイントです。

 

[1] Effects of a belt on intra-abdominal pressure during weight lifting. Med Sci Sports Exerc. 1989 Apr;21(2):186-90.

[2] The effect of an abdominal belt on trunk muscle activity and intra-abdominal pressure during squat lifts. Ergonomics. 1990 Feb;33(2):147-60.

[3] The effects of a weight belt on trunk and leg muscle activity and joint kinematics during the squat exercise.J Strength Cond Res. 2001 May;15(2):235-40.

[4] The effectiveness of weight-belts during multiple repetitions of the squat exercise. Med Sci Sports Exerc. 1992 May;24(5):603-9.

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*