
トレーニングの効果はボリュームに比例します。しかし、ボリュームを増やせば増やすほど効果が増すわけではなく、実際にはある程度以上のボリュームを超えると逆に効果は下がってしまうようです。
今回は、ボリュームとトレーニングの効果の関係を調べた研究を紹介します。
論文タイトル
「適度なボリュームの高強度トレーニングは、少なすぎるボリューム及び多すぎるボリュームのトレーニングに比べ、ウェイトリフターの筋力をより大きく向上させる」
Moderate volume of high relative training intensity produces greater strength gains compared with low and high volumes in competitive weightlifters. Journal of Strength & Conditioning Research(2006)
実験内容
目的
3種類のボリュームのトレーニングがウェイトリフティングのパフォーマンスに与える影響を確かめる。
被験者
競技歴3年以上の51人のウェイトリフター。
トレーニング
をボリュームの異なる次の3つのグループに分け、60~80 %1RMの程度の適度な重量と、90%1RM以上の高重量を組み合わせて10週間のトレーニングを実施した。
- 低ボリューム群(合計1,923レップ)
- 中ボリューム群(合計2,481レップ)
- 高ボリューム群(合計3,030レップ)
測定
- スナッチ、クリーン&ジャーク、スクワットの1RM
結果

図1 トレーニングの効果。LVGは低ボリューム群、MVGは中ボリューム群、HVGは高ボリューム群を表す。
- スナッチ、クリーン&ジャーク、スクワットにおいて、中ボリューム群が最も1RMを向上させる効果が高かった。
- スナッチは中ボリューム群のみが1RMを向上させた。(6.1%)
- パフォーマンスを低下させた人の割合は、中ボリューム群(7.8%)で最も低くなった。 (低ボリューム群では16.7%、高ボリューム群では20.4%)
まとめ
トレーニングには適切なボリュームが存在し、そのボリュームを超えてトレーニングを行うと効果が下がる。
考察(管理人の私見)
負荷が同じであれば、トレーニングの効果(特に筋肥大)はボリュームに比例します。しかし、この実験ではボリュームの一番多い高ボリューム群ではなく、中ボリューム群で最も記録が伸びました。
これは「トレーニングには適切なボリュームが存在し、そのボリュームを超えてトレーニングを行うと効果が下がる」ということを示唆しています。
トレーニングの効果は、与えられたストレスに対して身体が適応することで得られます、もし適応の限界を超えたストレスが与えられても、それはただのダメージとなってしまいます。
ボリュームが増えればその分ストレス(筋肉のダメージや神経系の疲労)も大きくなるため、高ボリューム群では適応できるストレスの範囲を超えてしまい効果が下がったものと考えられます。
逆に、低ボリューム群は最適な適応に至るにはボリュームが足りず、効果が小さかったものでしょう。
ボリュームを増やすことは筋肥大において重要ですが、疲労とのバランスを上手く取り、適切なボリュームでトレーニングを行うことが大切だと言えます。
また、この研究ではパフォーマンスを低下させた選手の割合も中ボリューム群で最も少なくなりました。最適な適応をもたらすボリュームには当然個人差はあるものの、多くの人にとって適切なボリュームの範囲というのは案外狭いのかも知れません。